☆ 色が大きく変わってきた
少し前のことだが、私がやっているヤングマン・メーカー<マクベス>とタイアップしている、マジソン街のトラディショナル・ショップ<チップ>社の社長、ボール・J・ウィンストン氏が、「トラディショナルなカジュアル・カラーは、いつの時代でも、ブライトな色だよ‥‥」といったことがあった。
その当時は、アース・トーン(地表の色に似たブラウン、オリーブなどを主体とした茶系の色調)が全盛だったので、この意味がよくわからなかったが、フォート・ローダーデイルやマイアミなど、高級リゾートに来て、これがよく理解された。
というのは、この辺に別荘を持つ高級族は、ほとんどがホット・レッドのパンツや、クリーム・イエローのシャツなどというブライト・カラーを着ており、それが、あの澄んだブルーの海と、染まるように鮮やかなグリーンの木々に実によく合うのである。
全米に巻き起こったすさまじいトラディショナル・ルック復活の波に乗って、ヨーロッパに端を発したアース・トーンはもうどこかにいってしまった。そして今年は、アメリカ特有の色であるケリー・グリーン(さえたグリーン)、ターコイズ・ブルー、ホット・レッドなどの一連のカラーが、カジュアル・ウエアやビーチ・ウエアで全盛である。
ラルフ・ローレンなどは、この系統の色をフォーマル・ウエアにも取り入れ、ホット・ピンクのタキシードの上着に白のスラックスを組み合わせたり、ターコイズ・ブルーのフォーマル・シャツに赤いリボンの側章付きの黒スラックスを合わせたものをショーで発表している。
DNR(デーリー・ニューズ・レコード=アメリカの専門服飾日刊紙)では、彼の色をDAZZLING COLORS(目もくらむような色)と表現していたが、これを見ても、この新傾向が察せられるだろう。
☆ 完全なアイビー・インフルエンスが目立つ
次に気がつく点は、日本でもまったく同じことだが、カジュアルなもの全般に、アイビー・ルックの影響が強くなっていることだ。
マジソン街のトラディショナル・ショップは活況を呈しているし、<パート・ピュリツアー><トラファガー><キュナート>など、昔からあるトラッド・ラインのシャツやアクセサリーを作っているマニファクチャーが、ブームに乗っているのも日本と同様だ。
これに比べて、ヨーロッパ調のスーツを並べた店は、みなセールの札をかかげている。
年に5?6度は行くニューヨークで、私はいつもファッション関係のジャーナリストと食事をして話を聞くのを常としているが、今回は誰もが「このようにオイル事情が悪くなり、インフレが加速されるようになると、人々は珍奇な服を求めず、どうしても長く着れるトラディショナル・ウエアに向かう傾向にある?」というのは、共通した意見だった。
このため、現在メンズ・ショップでは、次のような動きが目立つ。
(A)ひと頃ジーンズをはいていたヤングマンが、再びチノ・パンツに戻り始め、これにストライブのファブリック・ベルトをしめるという着方が増えている。このため、大衆品を作るスラックス・メーカーでは、この種のベルトを付けた製品を作り出している。
(B)Tシャツが全盛であった2〜3年前に比較して、ポロ・シャツが大きくクローズアップされてきた。メーシー・デパートなどでは、1階の入口近くに広い面積をポロ・シャツ売場のためにさき、<ガント>や<ラコステ>などの製品を驚くほどの量で扱っている。
このように、若い人を中心に、人々がTシャツやウエスタン・シャツのような土臭いものから、もっとクリーンでタウン感覚のあるポロ・シャツに移行するのは、今年の傾向からいって明らかだろう。
(C)最後にインディア・マドラスの驚くべきカムバックがあげられる。‘50年代のようにブリーディング(洗うと染料が落ちて、にじみの出てくるマドラス)やパッチ・マドラスなど本格的なものが好まれるようになり、いわゆる柄だけがマドラス風なものはまったく駄目なのも、トラディショナルで本格的な動きが出てきたひとつの証拠だろう。