ところで、具体的にいって、<ブリティッシュ・アメリカン>と呼ばれる、新しいトラディショナル・ルックはどのようなものなのだろう。以下、順を追って、各ポイントを説明していこう。
素材
アレキサンダー・ジュリアン氏もいっていたように、何といっても、天然繊維が中心になる。それも、天然繊維の持味を最大限に生かしたサーフェイスのものがよりよい、というわけである。
まずスーツ用としての宸Pはウーステッド・フラノだろう。このフラノの復活は久方ぶりだが、チャコール・グレーから、ミディアム・グレーまでのグレー・ファミリー(グレーの一群)がこの秋のホット・ポイントとなろう。
キパリーツイル、ギャバジン、サージなどの綾織地もなかなか強い。そして忘れていけないのは、スポーテックスのような平織地の紡毛や、ツイード・ウイズ・ウーステッド(梳毛紡毛)のスーツ地だ。
柄はクラッシック・パターン一辺倒である。一頃のようなファンシー・ソリッド(地紋入りの無地)はなくなって、無地なら普通の無地であり、ペンシル・ストライプであり、グレン・チェックであり、ヘリンボーンであるといった、それこそ教科書に出て来るような一番ベーシックなクラッシック・パターン中心に展開されることになろう。
ブレザー地ではサージ、紡毛のフランネルが中心で、これは、ベーシックなブルー・ブレザーが話題になっている。スポーツ・コートでは、グリーンからブラウンまでのアース・トーン(土色)のミックスチャーのツイードが多い。
なお、書き忘れたが、スーツ地、スポーツ・コート地にコーデュロイ(中畦→中細畦)も多く使われている。
シルエット・デザイン
スーツのシルエットでは、@ソフター・ショルダー(パッドをあまり入れない肩、この説明は、普通ナチュラル・ショルダーとスクエア・ショルダーの中間で、ややナチュラルに寄ったような肩、という表現のときに使われる)、Aナローワー・ラペル(ややせまい衿)Bほんの僅かルーズにしたボディ・ライン(決して、シェープ、つまり、しぼり込みではない)という説明がなされている。
あまり具体的ではなく、私も現物を見ていないので、何ともいえないが、一言でいえば、アイビー・リーグ・モデルほど極端でなく、これに似ているが、パッド、胴しぼりなどにアクセントを付けたラインと解すればよいだろう。
デザイン的には、ダブル・ブレストと3つボタンのベステッド・スーツが中心である。
スポーツ・コートやスポーツ・スーツなどカジュアルなものでは、エルボー・パッチ、チェンジ・ポケット、ガン・パッチ、スロット・タッグなど、いわゆる、ブリティッシュ・アクセントの強いものが多くなるのはいうまでもない。
シャツ&タイ
シャツやタイの新しいコーディネーションは、<ブリティッシュ・アメリカン>の特徴をもっともよく現している。
まず目立つのが、ボタン・ダウン・シャツの強いカムバック。<ポール・スチュアート>の社長クリフ・グロッド氏のように、「今日の顧客は
種々のバラエティ・ルックを求めている。ボタン・ダウンの復活もそのひとつにすぎない。」なんてすましている人もいるが、これは<P・スチュアート>が、ずっとボタン・ダウンを扱って来たからで、一時アメリカのメンズ・ショップの店頭から姿を消したボタン・ダウンが、この秋には、全シャツの15パーセント位までの売上になりそうである。
アメリカの専門誌、DNR(デイリー・ニューズ・レコード)は、6月11日号で、『ベステッド・スーツと、ボタン・ダウン・シャツの復活』という特集を組み、その中で、「これ、(つまり、ボタン・ダウン・シャツのカムバック)は、この秋に強くなって来る、ブリティッシュ・アメリカン・スタイルの影響と、‘50年代のクラッシック・トラディショナル・ルックへの復帰の両方に、確かな関係があろう‥‥」と述べている。
この他、ピン・カラー、ラウンド・カラー、ダッブ・カラーなど、クラッシックの本命も登場の気配を見せている。
<ブリティッシュ・アメリカン>の雰囲気を表現するものとして、カラー・ピンは非常によく使われるようになった。このピンも、日本のようにTさすUのではなくはさみこみの、しかも大型のものが多く、一番新しいところでは、コーデュロイのスリーピース・スーツに、ビエラのスポーツ・シャツを合わせ、それを、大型の金色カラー・ピンで止め、ツイードのネクタイを合わせる。「これぞB・Aルックの見本」みたいなものも見られるようになった。
その他、クレリック・シャツのダブル・カフス、なんていうのも、この着こなしをよく表現できるだろう。
ネクタイでは、久しく見なかった、英国的な紋織のクラブ・タイ、ツイード・タイなどが、大きくクローズアップされてくる。
☆ ☆ ☆
この原稿を書き終わってホッとしている時、手元に届いたニューヨーク・タイムズに、IACD(国際衣服デザイナー協会)が、来春夏のシルエットに、このルックを取り入れたことが報じられていた。
いよいよこれは本物だ。資料不足で、言葉の上での説明のみに終わってしまったが、1?2ヶ月中にニューヨークへ飛ぼうと思うので、その時に又、詳細を伝えられるだろう。
いずれもアレキサンダー・ジュリアンが提唱するブリティッシュ・アメリカンのスーツ&ジャケット。右のダブル・ブレステッド、左2点の3ボタンのベステッド・スーツとジャケットなど、伝統的なブリティッシュ・ルックにトラッドな味つけがミックスされている。