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Shiro Itoh’s Archives-(5)-3
★トラディショナル・ルックに対する日本とアメリカの考え方の違い

 以上、長々とインタビューを引用したが、さてここで問題になるのはトラディショナル・ルックに対する、日本とアメリカの考え方の違いである。この点をクリヤーにしておかないと、すべて混同してしまうので、まず第一に、これを説明しなければならない。
 下の図をご覧いただこう。これは、現在のアメリカのメンズ・ファッションを、私なりに解明したものだが、まず東海岸(イーストコースト)の流行圏に属するものに、オールド・ブルックスブラザーズ・タイプ・トラディショナルと業界人が呼ぶものがある。読んで字の如く、あのトラディショナル・ショップで有名な"ブルックスブラザーズ"が綿々と引き継いでいる形で、一口にいえば、アイビー・リーグ・ルックというのがこれである。

この傾向は、アメリカでは、現在、それほど強いものではないが、昔、アイビー・リーグの大学を卒業し、今では、社会の上層部に上りつめた、サクセスフルな40歳以上の実業家を中心に愛されている。
 次に、同じ東部流行圏にはいるものに、先ほどから解説を進めている<ブリティッシュ・アメリカン>がある。そして、この二つ、つまり(A)のグループが、トラディショナル・ファッションに属しているわけである。
 一方、目下、全米に強いのは、<ヨーロッピアン・インフルエンス>、つまり、ヨーロッパの影響を受けた傾向だ。この<ヨーロッピアン・インフルエンス>は、ボリュームとしてはまだまだ主流で、イースト・コーストのみならず、ウエスト・コースト(西海岸)にも、その影響を与えている。
 一方、アメリカの西海岸独特のものとして<カリフォルニアン・ルック>も忘れることは出来ない。
 <カリフォルニアン・ルック>は、カリフォルニアの明るい太陽、抜けるように青い空、目にしみるような木々のグリーンなどをバックにして作り上げられた、原色を中心にしたカジュアル・ウエアで、その全貌は、毎年2回、サンディエゴで行われるMAGIC(メンズ・アパレル・ギルド・イン・カリフォルニア)のコンベンションでお目に掛ることが出来るものである。
 そして、この<カリフォルニアン・ルック>も、カジュアルなものを中心に、世界中に影響を与えている。

 ところで、日本の場合はどうだろう。我が国では、トラディショナル・ルックの範疇に入るのは、オールド・ブルックスブラザーズ・タイプのみである。
 このタイプは、最近、数は減少こそすれ、密度はますます濃くなり、熱心なファン・グループを作っている。
 一方、一見トラディショナル風に見えるものに<ニュー・トラ>と称する日本独特の呼名がある。この<ニュー・トラ>は、誰がいい始めたか分からないが、非常に、変わった言葉で、アメリカでは絶対通じない、トラディショナル・ルックとはまったく別のものなのだ。
 そして、その内容を分析すれば、アメリカの(B)、つまり、<カリフォルニアン・ルック>に非常に類似していることが理解されるのである。
 その他に、アメリカ同様、ボリュームとして、もっとも大きな、ヨーロッパ調の傾向が、あることはいうまでもない。

 

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