☆シアサッカー・スーツ
ニューヨークに『1290ビル』というおかしな名の付いたビルがある。アベニュー・オブ・アメリカスの1290番地にあるビルなのだがこれは『ツウエルブ・ナインティ・ビルディング』と発音し、アメリカのファッション業界人には有名な建物だ。
というのは、ここには、ほとんどの生地商社が集まっているからだ。
ツウエルブ・ナインティの中では、現在の時点でファブリックデザイナーたちが1978年の春夏の生地のデザインを終わったところである。
77年から78年にかけての傾向は何だろう。もしあなたが、テープレコーダーでも持って、廊下を忙しげに歩き廻る彼らにマイクを向けたとしたら、返ってくる言葉は、異口同音に「これからの生地のデザインは、ブリティッシュルックか、アイビーリーグルックのどちらかの影響を受けたものに違いない‥‥」というに違いない。
そしてまた「われわれはもうあのヨーロッパ調にはあきあきした。第一、こうスポーツムードが高まってくると、あのペラペラした感じでは合わなくて‥‥」ともいうだろう。
こんなわけで、ニューヨークタイムズ・マガジンがこの夏、一番に推すのはシアサッカーのスーツである。
シアサッカーとは、いまさら説明するまでもないが、たて糸のうち何本かを長くしてこれを製織時にたるませて、布の表面に波上の<しぼ>が出るように織上げた生地だ。表面が<しぼ>のために立体的なので、体にベタ付かず、盛夏にはもってこいのものなのだ。
もともとサマージャケット用の素材で、白とライトブルーの縞のものが多く、これに紺無地のスラックスを合せて、セパレーツスタイルとして着る、という着こなしがこれまでは一般的だった
ところが、この夏は、シアサッカーが、スーツとしてカムバックする気配を見せているのである。
写真の4点がそうなのだが、スリーピースあり、ダブルブレストありだが、値段は左から右へ、B&Bロリース185ドル、ブレミングデール110ドル、ポール・スチュアート250ドル、B・オルトマン120ドルといったところ。いずれも市内の有名デパートでのプライスである。