☆サーティス・ノスタルジア
未来に希望を失い、現実に失望したアメリカ人にとって、今、最高の喜び、娯楽があるとすれば、それは、<過去を振り返ること>ではあるまいか。
ブルックスブラザーズの店頭に、30年のボーグから切り抜いた面がれいれいしく額に入れて飾られている。値段は25ドルと高い。
「スティング」「華麗なるギャッピー」「ペーパームーン」「ボルサリーノ」「ゴッドファザー」「チャイナタウン」ETC、ETC。最近あたった映画は、みな20年代、30年代をテーマにしたものばかりだ。
パーカーが作った、30年代のレプリカである「ビッグ・レッド」という万年筆は大評判だった。対抗上、シェーファーは<ノーナンシス>を僅か1ドル98セントでだす。これも好評でごく最近、「ニュー・ノーナンセンス」を5ドルで売り出し始めた。
それにしても、なぜ、このようにノスタルジアが30年代に集中するのだろう。これには、いろいろ説があろうが、つまるところ、この時代に、もっとも純粋なアメリカそのものがあったからなのだろう。
アメリカ?というと我々がまず頭に浮かぶ大きな流れるようなラインを持った自動車、コカコーラ、チューインガム、スーパーマーケット、チェーンストア、これらはみなこの時代に生れ、そして世界を制覇した。
実にこの時代こそ、輝ける夢のゴールデンエイジだったのである。
このサーティス・ノスタルジア(30年代の郷愁)も、建国2百年をきっかけにますます強くなろう。
☆ウエスタン・インフルエンス
ブルーのユニフォームにサーベルを下げ、黄色のスカーフを巻いたスマートな、健康そうな若い士官の指揮する騎兵隊が、荒野を行く。
軍旗を持つ荒れくれ軍曹も、ご婦人にだけは親切なジェントルマンである。
一方、幌馬車の群は、西部へ移住する数人の家族を乗せて、移動している。その時、スー族かアパッチか、とにかく多数のインディアン(当時はネイティブアメリカンのことをインディアンと言った)が、奇声を上げて襲い掛かって来た。
全員あわや全滅と覚悟した時、はるかかなたの山かげから、軽快なラッパの音が聞こえて、先程の仕官に指揮された騎兵隊が駆けつけて来た。
いつの間にかインディアンの姿も消えて、日焼けした仕官の笑顔が、星条旗をバックにして美しい。真赤な、あきれるほど大きい夕日が皆の横顔を赤く照らす?典型的な西部劇の一シーンである。
フロンティア?かつては、ここにアメリカ人の男性的な夢が凝縮していた。そして、そこには、努力さえすれば、誰もが手に入れることの出来る冨が横たわっていたのである。
このフロンティアをバックに生れた数々の服装、たとえばバンダナ・スカーフ、ブルージーンパンツ、ランチコート、ウエスタンシャツ、ペンドルトンのウールシャツのワイルドで野趣豊かな感覚は、必ずや我々の心を強く打つだろう。
この意味で、今年こそはウエスタン・インフルエンスが強く出て来る、というので、手ぐすね引いて用意しているある大メーカーがあるが、これは、懸命なことだと思うのである。