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Shiro Itoh’s Archives-(2)-2

●ネールスーツの流行はまったく終わり、 いまやエドワーディアンモデル時代


「ネールスーツ オー デッド!!」
 前述のピーター・バルドー氏にネールスーツついて質問したとき、たった一言でかたずけた彼の言葉がこれだった。
 事実立衿の、日本ではマオスーツとも呼ばれるこのスーツは、前シーズンの、それもシーズン中途で終わってしまい、いまやよほどのディスカウント・ショップにでも行かない限り見られなくなってしまった。
 この影響か、シャツジャケットなどでも、チュニック的なものはあまりふりわず、アバンキャルド・ショップ(前衛的な商品を扱う店)でもフリルのついたロメオシャツはよく見かけるが、チュニックはほとんどお目にかかれない。

 これに代わって、ファッションデザイナーや、宣伝関係のクリエーターに愛好されているものは、エドワーディアンスーツである。
 エドワーディアンと呼ばれる型にもいろいろあるが代表的なものは、最近、新しい恋人、十九歳のバービー・ペントンとヤニさがっている、例のプレーボーイ社の社主、ヒュー・ヘッナーの着ているようなのがこのタイプである。
 つまり、肩はスクエアショルダー、衿はナポレオンカラーで、ダブルの4つボタンまたは6つボタンウエストを強くしぼって、深いサイド・ベンツか、やはり深いボックスプリーツ(ベンツになっていないものが大半)を持った型である。
 アメリカには、ピエール・カルダンがやっているような、細身のコンチネンタルスーツは、彼らの体格上合わないせいか、ほとんど見られない。これに代わって、流行のトップを行く連中が着ているのは大半がエドワーディアンモデルである。
 しかも、このようなモデルを、日本のようにヤングマンだけでなく、むしろ、社会的地位もあり実力もある、30代、40代の中年層が好んで着ているという点が一番違うところだろう。
 一方、これほどファッショナブルなものは好まない、しかし、ありきたりのミドル・オブ・ザ・ロード(特徴のない中庸を行く服)はいや、かといって、ウエストコースト(西海岸)ではないのだから、コンテンポラリー型も着られない、というむずかしい注文の身だしなみのいいビジネスマンには、ブリティッシュモデルがもてている。
 ブリティッシュモデルはメーカーによっても、若干ディテールは違うが、もっとも一般的なものは、ナチュラル・ショルダー(自然肩-これが大切なポイント)で、脇のダーツは、トラディショナルモデル同様一本で、ウエストは両脇でなだらかにしぼり込み、衿は菱衿(ノッチラベル)だが、幅8.5センチ?9センチと極端に大きく、両脇のポケットのフラップも、5.5センチ〜6センチと大きめ、というのが目立つ点である。
 このワイダーラベル、ワイダーフラップというのが、ブリティッシュモデルの特徴のひとつで、幅広のディテールで男性らしさを強調しているというわけだ。
 衿が広くなり、脇ポケットのフラップが広くなると、これに応じて衿やポケット口にかけられたミシンステッチもグッと太めになってくる。
 このため、ステッチ幅も8ミリ〜10ミリと、従来5ミリ程度だったのに比較して、 大胆さが増してくる。
 このブリティッシュモデルは3つボタンより2つボタンのほうがフィーリングに合うせいか、後者のパーセンテージが高いようである。
話が前後するが、この背広はコンチネンタルスーツのように裾がフレヤーを持って開く、といことはなく、ほどよいバランスを保っている。また、背中のベンツは、ほとんどがサイドで、25センチ前後と、やや深めになっている(以上いずれもバスト39インチのショート”日本のA5号サイズに該当”の寸法)
 
 生地については、紙面の都合上、あまり詳細には発表できなくて残念だが、やはりいぜんとして、ミルドフィニッシュ(起毛した仕上げ)が続いており、しかも柄では、1930年を思わすような、複雑なオルタネート(交互)、ストライプが中心である。
 ただ、一つだけアメリカを見て日本のメーカーに注意したいのは、現在、ウィークエンダーなどとよばれているスポーツスーツの中心素材が、日本で使われているようなツイードではなく、いかにもツイード 風の外観を持った太番手のウースチッドだ、ということである。
 これは、ツイードでは、スラックスなどすぐひざが出るために特殊な効果を担うもの以外は不可、というアメリカ的な実利主義の現われ、と考えてよいだろう
 
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