●アメリカでの三つの挿話
マンハッタンでのアメリカン・マネージメント・ビルディング18階のオフィスに、親友のファブリック・デザイナー、ピーター・バルドー氏を訪ねる。
「やあ、来たな、来たな‥‥」
大きなゼスチャーで肩をたたく彼、見ればいつものトラディショナルなダブルのブレザー姿の彼は、ダブルのエドワーディアンスーツに変って、おまけに立派なあごひげまでたくわえている。
衿元には、幅11センチはあるかと思われるワイド・タイ、そして私の日本ではかなり広めと思っていた、黒のニット・タイを指さしてこう叫んだ。
「なんて細いネクタイしてるんだ。見っともないぞ‥‥」